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No.202【判例】退職者の資格取得費用の返還請求できるか

〜とよひらの社労士通信No.202〜【判例】退職者の資格取得費用の返還請求できるか

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社労士法人とよひら 鎌田です。

今回は、

「【判例】退職者の資格取得費用の返還請求できるか」

について、裁判事例を御紹介したいと思います。

 

【労働基準法第16条 賠償予定の禁止】

従業員が資格取得を出す場合に、福利厚生として会社が立替や補助を行うことがあります。

では、退職した場合に返還を求めることができるでしょうか。

これには「労働基準法第16条」が関連します。

(賠償予定の禁止)

第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

法令は、ややこしい文章も多いですが、非常にシンプルな条文となっています。

 

「3年以内に退職したら違約金30万円」などの契約は、明確に労基法第16条違反となります。

 

また、退職時に研修費用・留学費用などを返還させる場合、同法違反となる事例が多いです。

※ 以下、事例を紹介しますが、簡易に説明していますので、正確には原文などを参考にしてください。

<労基法16条違反となった例>

(サロン・ド・リリー事件)

※ 社内研修は使用者として当然なすべき性質であり、退職時の講習手数料の支払義務は退職の事由を奪う性質である

(富士重工業事件)

※ 海外研修も業務に従事しており、費用は原告(会社)が負担すべきものであるため、違約金の定めにあたる

(新日本証券事件)

※ 留学費用の返還が退職者への制裁の実質を有する

一方で、令和5年に資格取得費用の返還請求が認められた事例がありますので、以下のとおり御紹介します。

 

【東京地方裁判所令和5年10月26日判決】

(資格取得費用の返還を巡る争い)

・自動車教習所を運営する企業が、新入社員に教習指導員資格取得の費用を立て替え、「3年以上勤務すれば返還を免除する」という合意を結ぶ。

・資格取得後約9か月で退職したため、会社は費用の返還を請求。

この請求が労働基準法16条(違約金や損害賠償の禁止規定)に違反するかどうかが裁判で争われた。

 

( 裁判所の判断:返還請求は適法)

・教習指導員資格は国家資格であり、取得すれば自動車教習所業界で有利な立場に立てること。

・資格取得後は早期に手当が支給され、社員にとっても収入増加につながること。

・費用返還請求期間も3年であり、長期間ではない

・資格取得期間中、給与が支給されるなど社員に有利な条件が提供されていたこと。

 

(参考)労働新聞社ニュース

※ 資格取得返還のケースすべてに当てはまるわけではありませんので御留意ください。

 

No.202〜【判例】退職者の資格取得費用の返還請求できるか まとめ

ということで・・・

今回は、「【判例】退職者の資格取得費用の返還請求できるか」について、お話しました。

資格取得費用の立替え制度は、社員のスキルアップを支援し、業務貢献を期待するものです。

ただし、早期退職などのリスクもあり、返還請求には様々な要因が絡みますので、制度導入には上記判例なども参考に御検討ください。

引き続き、よろしくお願い致します。
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発行責任者:社会保険労務士法人とよひら
担当:特定社労士・中小企業診断士 鎌田 真行
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