No.143「【歩合給の残業代】総労働時間での計算方法」
目次
〜とよひらの社労士通信No.143〜【歩合給の残業代】総労働時間での計算方法
※ このブログ記事は、メルマガで配信したものを一部変更し、掲載しています。
週末は本当に久しぶりに札幌の街中に買い物に行く予定です。
社会保険労務士法人とよひら 鎌田です。
今回は、
「【歩合給の残業代】総労働時間での計算方法」
のお話しです。
【歩合給とは?】
通常の固定給は、月額20万円のように毎月決められた金額が支払われます。
それに対して「歩合給」は例えば、
・1件の契約に対して3万円
・売上10万円に対して3万円 など
業務の結果によって、給与を支払う制度となります。
【歩合給における時間外計算とは?】
歩合給における時間外計算は、通常より複雑になります。
理由は、歩合給には「通常の労働分の給与」が含むと考えられるため、
歩合給の1時間当たりの単価は、残業時間も含めた総労働時間で割って0.25を掛けることになります。
といっても、わかりにくいと思いますので、以下の厚労省資料P6や、下の例をご覧いただければと思います。
(参考)厚労省 しっかりマスター労働基準法 割増賃金編 P6
【例をあげて計算してみよう!】
<基本給20万円、歩合給19万円、所定労働173時間、残業17時間の場合>
・基本給分の残業代
20万円÷173時間×1.25×17時間=24,567円(端数切上)
・歩合給分の残業代
19万円÷(173時間+17時間)×0.25×17時間=4,250円
残業代の合計=28,817円
となります。
繰り返しになりますが、歩合給には総労働時間の通常の賃金(1.00)は含まれていると考えられるため、このような計算になります。
一方で、基本給には残業時間の分は一切含まれていないため、所定労働時間で割って1.25を掛けることになります。
【完全歩合給は違法なのか?】
では、先ほどの条件で「給与のすべてが歩合給」だった場合、
<歩合給39万円、所定労働173時間、残業17時間の場合>
・歩合給分の残業代
39万円÷(173時間+17時間)×0.25×17時間=8,724円(端数切上)
となり、先ほどと比較すると、2万円程度の差が生じています。
歩合の要素を強めて、時間外の単価が下がるので、従業員が効率的に働くことへの会社からへのメッセージとなります。
ただし、このような「完全歩合給」の給与制度は違法と指摘されることがあります。
これは、
労働基準法第27条(出来高払制の保障給)
「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」
に違反するのではないか? という懸念からです。
逆にいうと、支給金額が「すべて歩合給」でも、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしていれば、違法ではないということになります。
<違法な完全歩合給>
・1件も契約を取れない場合、給与はゼロ。
<合法な「すべて歩合給」の制度>
・1件も契約を取れなかったので歩合給の計算はゼロになるが、
「労働時間×保障給/時間」を支給する。
・このような方法は、職種によっては合理的な導入が可能で、運送業やITエンジニアなどで採用されることがあります。
まとめ No.143「【歩合給の残業代】総労働時間での計算方法」
ということで・・・
今回は、「【歩合給の残業代】総労働時間での計算方法」について、お話しました。
このような「歩合給」制度の導入について、現在、当方でも導入に向けて検討している企業があります。
ただ、留意点として、「歩合給」は「残業代」の削減のために導入するというより、
職種などによって、そうせざるを得ない、そうした方が合理的、という場合に選択するものと考えます。
もし、現在の労務管理や残業代に苦慮している場合は、このような考えも参考にしていただければ幸いです。
不明点がございましたら、ご連絡ください。
引き続き、よろしくお願い致します。
———————————————-
発行責任者:社会保険労務士法人とよひら
担当:特定社労士・中小企業診断士 鎌田 真行
メルマガの登録はこちらから
———————————————-
当事務所の詳細については、以下のページもご覧いただければ幸いです。
<社会保険労務士法人とよひらについて>
・対応可能な業務
・日々の業務対応のイメージ
・料金プラン
・お問い合わせ
この記事へのコメントはありません。